2015-2-11_11:27
「カッカッカーのカッカッカー」
見た目も鳴き声?も、一度出くわしたらしばらく夢に出てきそうなくらいの強烈なインパクト。
「ケンダイ」という、藁で編まれた三角形の身体から突き出た裸の腕と足。
群れをなして雪の積もった温泉街をひょこひょこと歩き周り、商店や温泉宿の前で輪になって踊る。
一緒に練り歩く赤いモンペのおばさんや沿道で待ち構えている人からは柄杓やバケツで水をかけられ、周りに群がる人たちから身体の藁を引っこ抜かれる。
時々、頭に手ぬぐいを巻かれる。
行く先々で湧き上がる笑い声。
なぜだか一緒に歩いていると楽しくなってくるのが不思議です。
「カッカッカーのカッカッカー」
■カセドリとは
この妙な生きモノ?は「カセドリ」といいます。
漢字で書くと「加勢鳥」で、「稼ぎ鳥」からきているといいます。
山形県上山市の上山城下から上山温泉街に伝わる風習です。
「小正月に遠い土地からやってくる神の声によって一年の豊かさを祝う」という信仰から生まれた、五穀豊穣・家運隆盛をもたらす歳神様の来訪行事で、寛永年間(1624年~1645年)に始まったそうです。
■水をかけられる理由
江戸時代の大火事のときに空を舞う「火喰い鳥」が類焼させたように見えたので、火伏せ(防火)の意味で「カセドリ(鳥)」に水をかけます。
また、歳神様に水をかけることが「水商売(商店や温泉宿など)」の商売繁盛につながることにもなるのです。
■手ぬぐいについて
ケンダイの先(「カセドリ」の頭)に手ぬぐいを巻くのは、一年の「家内安全」「商売繁盛」「火の用心」「五穀豊穣」を祈願する意味があります。
■なぜ藁を引っこ抜かれるのか
ケンダイの藁を引っこ抜くのは(本当は抜け落ちた藁を拾うのが正しいそうですが…)、藁が縁起物で、その藁で女の子の髪を結うと豊かな黒髪の美人になると言われているからです。
奇妙な姿や動きは、「カセドリ」の行事が始まった頃は「御前加勢」といって、上山城のお殿様の前で披露したときに、お殿様を楽しませるために賑やかな動きになったのではないかと(これは僕の推測です)。
「カセドリ」の声にも姿にも動きにも、ちゃんと意味があるんですね。
■カセドリになれる?
途中で「カセドリ」一行が休憩したお肉屋さんの30代の男性店員に「カセドリになったことはないんですか?」と聞いたところ、
「ケンダイの数が限られているし、なり手のほとんどは県外の方なので、なかなかなれない」
という返事をもらいました。地元の行事なのにどうしてだろうと思っていたのですが、その後保存会の方が次のように話しているのを聞ききました。
「以前は青年団が中心になって行事を行っていたが(※注1) 、カセドリのなり手が少なくなってしまい行われなくなってしまった。その後(昭和61年)「保存会」が立ち上がり復活してからは、カセドリのなり手を積極的に市外から募集し、保存会メンバーは当日の運営や道路警備などをするので、地元出身のカセドリは少ない」
(注1:寛永年に始まり明治29年で一旦絶えたカセドリ行事は、昭和34年に復活した)
それを聞いて納得しました。
実際、今回のカセドリ30羽弱の中で地元の人は3人くらいでした。また外国の方も2名、女性も3名含まれていました。
限られた地域に伝わる興味深い伝統行事が多くの人の力を借りながら続いていくことは良いことだと思います。でも地元の人が参加しにくいというのはちょっと残念な気もします。
カセドリになってみたい方は、「カセ鳥保存会」へぜひ連絡してみて下さい。
カセドリになると、こんな目に会いますけどね(笑)
■日本各地のカセドリ
訪問神が訪れる年中行事は秋田男鹿の「なまはげ」や石川能登の「あまめはぎ」が有名です。
「カセドリ」は姿が特徴的で上山独特の風習なのかと思っていましたが、同じような行事は他にも
宮城県加美郡加美町「切込の裸カセドリ」 佐賀県佐賀市蓮池町「見島のカセドリ」 などがあるようです。
地元の行事を見直してみると、新たな発見があるかもしれませんね。
参考:加勢鳥城下地図(観光地図)
「
上山市観光物産協会」
「カセ鳥」保存会 on the Internet「水はかけないでね」
秋田なまはげはこちら
「
PHOTO REPORT ~ なまはげ柴灯まつり2012 ~ 男鹿・秋田」
/* ----- 上山 - 山形 - 2015 - Nikon D700 ----- */