2011年 11月 30日
Photo Stream ~ 茜色の白河の関 ~ 旗宿・福島県白河市 |
2011_11_20_16:06
福島県と栃木県にまたがる福島県道76号伊王野白河線。
かつては五畿七道の1つである東山道だったが、江戸に幕府が開かれ奥州街道が関東と東北を結ぶ主流になり現在は地方道路として機能している。
8世紀の初め頃にはすでにあったと伝えられる白河の関はその東山道、今の福島県道76号線沿いの栃木県寄りに遺構が残っている。
といっても思わず通り過ぎてしまうような小さな丘で、よく見ると濠や土塁の跡のような起伏があるといった状態だ。この辺りは旗宿といいかつての宿場町だったようだ。
白河を越える、というのは陸奥国(福島、宮城、岩手、青森など東北地方太平洋側)に足を踏み入れるということを意味する。徒歩移動しかなかった時代は相応の準備と覚悟が必要だっただろう。
というと白河の関は江戸時代の関所だと思ってしまいそうだが、実際は平安中期には機能しなくなっていたそうだ。江戸時代の関所も奥州街道沿いに設けられたはずだ。
いまでこそ東北新幹線が通り東京~新青森間は最短3時間10分で結ばれているが、かつてみちのくは遥か北の地だったのだ。
落ち葉に覆われた緩やかな起伏のある白河の関跡は雨にぬれてひっそりとしていた。
時折西日が鼠色の雲を背後から黄金色に染めて不思議な色合いの空になる。
暗くて明るくて、赤くて青い、次々に周りの森や空の色が変わっていった。
湿った石段を上ると朱色の屋根の小さな神社があった。白河神社だ。
賽銭箱の前に置かれた升の中に、紙と木で作られた矢尻が立てられていた。願い事が書かれている。
「矢立ての松に願掛けやな」
後ろから声が聞こえた。
驚いて振り向くと痩せて小柄な老人が立っていた。薄手のジャンパーに綿のズボン、小さめのナップサックを肩に掛け、右手には丈夫な枝をそのまま利用して作られた杖を持っていた。
頭巾のような、つばのないトルコ帽子のようなものを被っていた。顔には笑顔皺が刻まれている。
「このちょっと下に根っこだけの松があったやろ。昔、源義経が鎌倉で兵挙げた頼朝の所に行く前にここであの松に矢を射って戦勝の願掛けしたんや。あんたは何を願ったのかな?」
そう言って老人は笑った。
「ああ、また会いましたね」
と僕は言った。
(つづく)
/* ----- 白河市 - 福島県 - 2011 - Nikon D700 ----- */
by kidai_y
| 2011-11-30 22:09
| 写真:日本