2012年 07月 04日
PHOTO REPORT ~ 東京晴空塔と東京天空樹 ~ 東京スカイツリー@浅草 |
2012-5-12_7:57
「越光」
「米沢牛」
「福井」
「青森」
これらは中国国家工商行政管理総局商標局で商標登録されている日本の商品名や地域団体商標、地名などの一部です。
経済産業省によると平成22年時点で275件にもおよび、これらの商品名を用いた中国国内での販売や、サービスなどでの名称使用にあたってトラブルが頻繁に発生している状況となっています。
このように、日本国内で一般的に使用されている商標が中国国内ではまだ登録されていないことを利用して第三者が先に商標登録を行ってしまうことを「冒認出願」といいます。
日本政府もこの事態を問題視し、経済産業省、特許庁、日本貿易振興機構(JETRO)が2008年以降、積極的に実態調査や日本国内の関係者への啓発等の対策を講じていますが、芳しい成果は上がっていないようです。
「無印」などの有名なブランド名や「クレヨンしんちゃん」などのキャラクタ名が狙われるのは中国国内での知名度が高いためです。 これに対し「米沢牛(2010年9月出願)」や「九谷焼(2008年12月登録)」などの地方の名産品までも冒認出願されているのはどうしてでしょうか。
地域ブランドの振興と保護を目的とした「地域団体商標制度」が始まったのが平成18年(2006年)です。もしかするとこの制度により「地域ブランド名」が多く誕生したことで、中国の第三者が目を付けるようになったのではと思ってしまいます。
2011年1月の調査では、日本の特許庁ウェブサイトに掲載された地域団体商標467件のうち、中国企業により出願されているのは既に8件あるそうです。割合にすれば僅かなものですが、このままだとまだまだ増えていくかもしれません。
驚いたのは日本の都道府県名までもが冒認出願されていることです。
青森、群馬、福井、愛知、岐阜、三重、兵庫、和歌山、山口、徳島、香川、愛媛、高知、佐賀、熊本、宮崎、鹿児島、政令指定都市として名古屋、浜松などが既に登録されています(2011年1月時点)。
逆に日本の自治体が中国で出願申請を行っているのは、
北海道、青森県、山形県、滋賀県、和歌山県、福岡県、佐賀県、長崎県、鹿児島県だけです。
福井県は名前を奪われているにもかかわらず、何も対策を講じていないということになります。
冒認登録の問題点として、当事者が気が付かないうちに中国で出願されているということが多いので仕方のないことなのかもしれませんし、「福井」そのものを販売したりはしないとはいえ、あまり気持ちの良いものではありませんね。
「東京晴空塔」は東京スカイツリーの中国語表記です。
これも以前は「東京天空樹」という名称でしたが、やはり中国国内で先に登録されてしまっていたため、急遽変更に迫られた事例の1つです。
東京スカイツリーを運営する「東部タワースカイツリー」は版権ビジネスを大きな収益源の1つとして位置付け、ロゴマークや名称、シルエットなどを商標登録しています。
国内14社と「オフィシャルパートナー契約」を結び販売促進目的での使用を認めています。
この他、何らかの形でスカイツリーを活用して商品やサービスを販売した業者からは、販売価格の5%をライセンス料として徴収しています。今のところ関連商品は500種類ほどあるそうです。
これは商標ライセンスが十分なビジネスになるからですが、中国での冒認出願とは大きく異なります。
もう1つの大きな目的である「ブランドイメージを損なわない」という要素が決定的に欠けていますし、なにより当事者ではありません。
「讚岐烏冬」(さぬきうどん)など香川県が中国当局に異議申し立てをして認められたり、青森県が「青森林檎」を取り戻したケースもありますが、「蝋筆小新」(クレヨンしんちゃん)を登録した中国企業に対する著作権侵害民事訴訟及び行政訴訟は勝訴判決(2012年3月)が下されるまでに8年も要しています。
また最近ではアップル社が「iPad」の商標使用に関し中国企業に48億円を支払うことで和解したとの報道がありました。
名前やデザインは商品そのものと同じく重要な要素ですし、ブランドイメージにも大きく影響してくるので、ついうっかり・・・が取り返しの付かないことにも発展しかねないのです。
違法ではないので結局はモラルや倫理観の問題になってくる話なのですが、なんだか腑に落ちないですね。
/* ----- 浅草 - 東京 - 2012 - Nikon D700 ----- */
by kidai_y
| 2012-07-04 22:09
| 写真:日本