2007年 11月 05日
旅文 02-06 「屋上日和」 |
昨日食べた甘いお菓子で胃がもたれたのか、風邪のせいなのか、おなかの調子が悪いので散歩も早々に切り上げ、宿の屋上でハガキを書くことにした。
宿は5階建でそこそこ眺めは良かった。ちょうど日本の晴れた春の日のようにぼーっと霞がかかったような青空で、遠くの山々の稜線が曖昧になっていた。じっとしていると結構暑い。ペラペラしたプラスチック製の椅子とテーブルがあったのでそこに腰掛けながら10枚ほどハガキを書いた。
旅行者は誰も屋上には上がってこなかったが、宿のスタッフらしいネパール人の兄ちゃん達がタバコを吸ったり、街を眺めたり、お喋りしたり、休憩場所として利用しているようだった。
ハガキも書き終わり街を見ながらあれこれ考え事をしていると、こんどはネパール人の女の子がやってきた。たった今シャワーを終えたようなバスタオルを巻いただけの裸足のその女の子はひたひたと僕の斜め前くらいに来てすっとしゃがみこんだ。濡れた長い黒髪の先やバスタオルの端からぽたぽたと水滴が落ちて屋上のコンクリートに何本かの筋を作っていた。目のやり場に困るというよりもちょっと怖い感じがして、彼女の方をあまり見ないようにしながら春先の霞んだ空を眺めていた。
ふいに彼女は立ち上がって、また同じようにひたひたと屋上から降りていった。
足跡と少しの水溜りが残っていた。
by kidai_y
| 2007-11-05 23:59