2012年 02月 28日
PHOTO REPORT ~ じゅうさんこのしじみ ~ 津軽・青森 |

2012-1-19_10:05
----- バスは山路をのぼつて北に進む。路が悪いと見えて、かなり激しくゆれる。私は網棚の横の棒にしつかりつかまり、背中を丸めてバスの窓から外の風景を覗き見る。やつぱり、北津軽だ。深浦などの風景に較べて、どこやら荒い。人の肌の匂ひが無いのである。山の樹木も、いばらも、笹も、人間と全く無関係に生きてゐる。東海岸の竜飛などに較べると、ずつと優しいけれど、でも、この辺の草木も、やはり「風景」の一歩手前のもので、少しも旅人と会話をしない。やがて、十三湖が冷え冷えと白く目前に展開する。浅い真珠貝に水を盛つたやうな、気品はあるがはかない感じの湖である。波一つない。船も浮んでゐない。ひつそりしてゐて、さうして、なかなかひろい。人に捨てられた孤独の水たまりである。流れる雲も飛ぶ鳥の影も、この湖の面には写らぬといふやうな感じだ。-----(太宰治『津軽』より)

十三湖も当然凍っていた。
近くには十三湊という、鎌倉時代にこの地方の有力豪族だった安東氏の拠点となる町の遺構があるのだが、そこも雪に埋もれていて、再び雪から発掘しないといけないような状態だった。
十三湖については僕がだらだら説明するよりも、太宰治の言葉を借りるとしよう。
----- 十三湖あるいは十三潟(がた)と呼ばれて、「津軽大小の河水凡そ十有三の派流、この地に落合ひて大湖となる。しかも各河川固有の色を失はず。」と「十三往来」に記され、津軽平野北端の湖で、岩木川をはじめ津軽平野を流れる大小十三の河川がここに集り、周囲は約八里、しかし、河川の運び来る土砂の為に、湖底は浅く、最も深いところでも三メートルくらゐのものだといふ。水は、海水の流入によつて鹹水であるが、岩木川からそそぎ這入る河水も少くないので、その河口のあたりは淡水で、魚類も淡水魚と鹹水魚と両方宿り住んでゐるといふ。湖が日本海に開いてゐる南口に、十三といふ小さい部落がある。この辺は、いまから七、八百年も前からひらけて、津軽の豪族、安東氏の本拠であつたといふ説もあり、また江戸時代には、その北方の小泊港と共に、津軽の木材、米穀を積出し、殷盛を極めたとかいふ話であるが、いまはその一片の面影も無いやうである。-----(太宰治『津軽』より)
どうやら、雪がなくてもかつての栄華は一片の面影もないらしい。
水深3メートルの湖は凍りつき、氷上をハクチョウがよちよちと歩いていた。


十三湖で唯一自慢できるのが、シジミらしい。
海水と淡水が混じる汽水湖なので島根の宍道湖と同じくシジミの生育に適しているのだ。
近くには「しじみラーメン」の幟がたち、道の駅にも「シジミの佃煮」から「シジミケーキ」まで様々なシジミ商品が並んでいる。
しじみらーめん。
しじみの風味があるあっさりした塩スープ。
殻ごとどっさり入ったしじみ。
ごく普通の縮れ麺。
太宰さん、やっぱり十三湖には今もこれといったものがないのかもしれません。
でも水も空もきれいです。

/* ----- 津軽 - 青森 - 2012 - Nikon D700 ----- */
平成24(2012)年津軽の冬編・・他の記事は、
「青白の世界」
「じゅうさんこのしじみ」
「道は竜飛へ」
「ほっかむりで」
「津軽のストーブ列車」
「津軽の笑顔」
「郷土富士のいわきさん」
by kidai_y
| 2012-02-28 22:42
| 写真:日本

