2012年 05月 14日
PHOTO REPORT ~ 時間を描く ~ 柴田町・宮城 |

2012-4-25_12:27
10年くらい前のこと。
カンボジアにあるアンコールワット寺院遺跡群の1つ、バイヨン寺院を見学していた。
まだ朝の9時頃だというのに気温は30℃を越えていた。もちろん日差しも容赦なく、石造りの寺院の南東側は強い光にじりじり照らされていた。四面に大きな観音様の顔が刻まれている尖塔が立ち並ぶ、複雑な凹凸のある建造物なので、あちこちに光と影の強いコントラストが生まれていた。
厳しい太陽を避けて日陰に入るとちょっとだけ涼しくてほっとした。
大きな観音様の顔近くの石段に腰かけてスケッチブックに絵を描いている若い男性がいた。30歳くらいの日本人だった。朝から暑いですね、などと挨拶をしていたら「写真好きなの?絵は描かないの?」と聞かれた。僕がカメラをぶら下げてあちこち撮影しているのを見ていたようだった。
「写真は好きでたくさん撮っていますけど、絵は描けないです」
と答えた。絵心がないので他人に伝わらないと思っていたし、何より時間をかけて絵を描くというのが旅先ではもったいないような気がしていた。
「絵を描くのが好きなんですか?」と聞くと、彼は好きだと言った。旅に出る前はゲームの背景画やCG画などを描く仕事をしていたという。今回の旅行では好きなだけ絵を描くつもりなのだそうだ。
「絵も描いてみるといいのに」と彼が言った。
「絵を描くのは時間がかかるけれど、時間をかけてその場所で見たものや感じたものを描くということは、その仕上がった絵に「その時間」を閉じ込めることができる。絵を描くということは、旅先での時間を形にするということだと思う」
暫くすると描いていた絵が仕上がったようで、それじゃいい旅をと挨拶をして別れた。
写真も絵も、その時の一瞬を切り取るというのは共通してるけれど、その一瞬に対する時間の感じ方が違います。描いている過程も含めた凝縮された時間が、1枚の絵にぎっしり詰まっているんですね。
素敵な時間の使い方ですね。
その後、何度かメモ帳にスケッチをしてみたことがありますが・・・。僕には写真の方が合っています。




/* ----- 柴田町 - 宮城 - 2012 - Nikon D700 ----- */
by kidai_y
| 2012-05-14 21:31
| 写真:日本

