アジアのカケラ

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PHOTO REPORT ~ 6月の春の雪 ~ 鎌倉文学館@鎌倉・長谷

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2012-6-1_15:22



 -----青葉に包まれた迂路を登りつくしたところに、別荘の大きな石組みの門があらわれる。(中略)先代が建てた茅(かや)葺(ぶ)きの家は数年前に焼亡し、現侯爵はただちにそのあとへ和洋折衷の、十二の客室のある邸を建て、テラスから南へひらく庭全体を西洋風の庭園に改めた。-----



 鎌倉市長谷寺から少しばかり歩いた静かな森の中にある鎌倉文学館
 加賀藩主前田利家から続く前田 旧侯爵家の別邸だった建物です。 明治23年頃、森に囲まれた山の斜面から由比ヶ浜の海が望めるこの場所に和風の館が建てられたのが始まりです。その後の明治43年(1910年)の火事による焼失や大正12年(1923年)の関東大震災による倒壊のたびに建て直され、現在の洋館は昭和11年(1936年)に改築されたものです。
 その後昭和58年(1983年)に鎌倉市に寄贈され、鎌倉市ゆかりの文学者の資料を集めて展示した文学館とななりました。平成12年(2000年)には国の登録有形文化財となっています。

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 洋館の正面に広がる芝生を抜けると、180種類以上のバラが咲くバラ園があります。
 その手前に、柔らかそうで小さな白いバラの花がたくさん咲いていました。1つ1つの花が肩を寄せ合うように集まっていて、まるでそこに雪が積もっているように見えます。
 でも一見降り積もった雪のように見えるのに、何故だかほんわかとした暖かみを感じました。どうしてだろうとよく近づいて見てみると、幾重にも重なった花弁がほんのり淡くピンク色に染まっているのが分かりました。
 隅に刺さっていた小さな名札に「春の雪」と書かれていました。 桜吹雪とはまた違った、春に降る雪があることを知りました。 

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 「春の雪」というバラの名前は、三島由紀夫が小説執筆のための取材で旧前田侯爵家別邸(当時)を訪れたエピソードから取られています。この取材に基づいた作品は『春の雪』という題名で発表されました。冒頭の引用文がそうです。             
 
 『春の雪』は『豊穣の海 4部作』の第一巻として書かれたものです。第三巻の題名である『暁の寺』とはバンコク市内のチャオプラヤ川のほとりに立つ「ワットアルン」というお寺のことというのは初めてタイを訪れた時から知っていました。美しいシルエットの塔が印象的で、バンコク市内の中でも好きな風景の1つです。でも小説は未だに読んでいません・・・。
 そろそろ読んでみようかなあ。


 -----われわれは恋しい人を目の前にしてさへ、その姿形と心とをばらばらに考へるほど愚かなのだから、今僕は彼女の実在と離れてゐても、逢つてゐるときよりも却つて一つの結晶を成した月光姫を見てゐるのかもしれないのだ。
 別れてゐることが苦痛なら、逢つてゐることも苦痛でありうるし、逢つてゐることが歓びならば、別れてゐることも歓びであつてならぬといふ道理はない。-----



/* ----- 鎌倉・長谷 - 神奈川 - 2012 - Nikon D700 ----- */



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by kidai_y | 2012-06-07 22:44 | 写真:日本