2007年 01月 01日
静かな時間 |
5時。
安宿のロビーのソファーには、フロント係りが毛布を被って寝ている。
開けっ放しの玄関を出ると、暗がりからバイタクの兄ちゃんが現れて手を上げる。
スクーターの軽いエンジン音が早朝の町を駆け抜けていく。
1月とはいえ日中は30度を越えるカンボジアも、早朝は冷え込む。
薄手のトレーナを着て首にはクロマーをぐるぐる巻いているのに、バイクのケツに跨っていると風が冷たい。
まだ通りには人の姿はほとんどない。
まばらに立つ街灯と、最近増えた大きなホテルのネオンが遠ざかり、真っ暗な森の中の道に入る。明りは僕らのバイクの小さなライトだけだ。エンジンの音がやけに大きく聞こえる。
15分ほどで遺跡の入り口に着く。
集合時間と場所を確認し、バイタクを降りる。
懐中電灯を持った係員に入場券を見せ、池の中に真東に伸びる石畳の参道を歩き出す。
暗闇の中に、たくさんの人の気配がある。なぜか話し声はあまり聞こえず、その変わりいろいろな足音がやけにくっきりと聞こえてくる。
ほとんど手探りのような状態でいくつかの階段を上って下りて、回廊を横切ると、広い中庭に出る。参道はそのまままっすぐ伸びていて、その先にぼんやりと見慣れたシルエットが見える。しかし今はまだ夜空と塔の境界が曖昧なままだ。
途中で参道を降り、経蔵を過ぎて芝生を少し進むと、小さな池に辿りつく。
参道をはさんで北と南に池があるが、ここは北側の池だ。
すでに何人かが座っている。
近くの売店のおばさんが早くも商売を始めていて、暖かいコーヒー(もちろんインスタント)などを持ちながら辺りの人に声をかけている。
しばらくぼーっと待つ。
少しずつ、周りの人も増えてくる。
でも人数の割には静かだ。
暗かった東の空が少し色付いてくる。
塔の周りに赤味が差し、輪郭が次第にくっきりと分かるようになる。
5本。
空は黒からだんだんと青みを帯び始める。

しばらくはこの状態が続く。
太陽が地平線に近づくにつれて、空は黄金色に光りだす。

そして最初の光が差し込む。


そして暑くて長い1日が始まるのだ。
アンコールワット / カンボジア
by kidai_y
| 2007-01-01 17:18
| 写真:カンボジア

