アジアのカケラ

- Something from around Asia -

旅文 02-07 「軌道修正」


 風邪がまだ少し残っていて身体はまだ本調子ではない。何より連日30℃を遥かに越えていたタイに比べて春先の日本のように気温が低く、天気も穏やかで過ごしやすいのでついついのんびりしてしまっていた。
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 インドラチョークをぶらぶらき、ダルバール広場のシヴァ寺院の階段の上まで登って日に当たりながら広場を行きかう人を眺める。たまには結婚式のパレードが鳴り物で囃しながら賑やかに通り過ぎていく。横では暇そうなネパールの男たちが同じように眼前に広がる広場を眺めていた。たまに話しかけられたりトレッキングを勧められたりするのだが、適当に相手をしつつぼーっとした時間を過ごしていた。
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 腹が減ると近くのローカル食堂に入り、モモという餃子みたいな食べ物を注文して食べ、寺院や建物に施された彫刻や仏像が祀られている小さな祠などを眺めながらあてもなく歩く。そんな風にしているといつの間にか日が暮れかけていて、辺りは薄青い影に包まれ始めていた。
 ダルバール広場を横切っていたとき、ネパール人の若者に呼び止められた。日本語でだ。胡散臭いなあと思ったのだが、向こうに彼の友人の日本人がいるので一緒に話しませんかと言うので行ってみた。
 クマリハウスの前には濃いサングラスを掛けた丸刈りでがっしりした体格の日本人と、キアヌ・リーブス似の色白で小柄なネパール人の若者が立っていた。ちなみに、僕に声を掛けてきた若者は黒褐色の肌で巻き毛のキューピーみたいな雰囲気だ。カトマンズのネパール人には日本人に良く似た顔立ちの人もいれば、北インドの人のように黒褐色の肌で堀の深い顔立ちの人もいる。キューピー君が、自分みたいな人種は「ネパーリ」と言い、キアヌ君のようなタイプは「ネワーリ」というのだと頼んでもいないのに説明してくれた。ネパールの民族は実際にはもっと複雑に入り組んでいるようだ。また、外見は違うが2人ともヒンドゥー教徒だった。ネパールもそうだしバルカン半島に行ったときも思ったことだが、民族と宗教というのはとても複雑でデリケートな要素だ。それに比べれば、日本はなんて単純なんだろう。
 サングラスさんは一見すると悪役のプロレスラーみたいな印象だったが、よくありがちな「サングラスを外すと人の良さそうな小さな目」というパターンそのままの人だった。何年か前にここへやってきてキアヌ君とキューピー君のガイドでトレッキングへ行って以来、ちょくちょくカトマンズに来ては彼らと遊んだりトレッキングへ行ったりしているという。今回も、すでに帰国した別の日本人男性と一緒に4人でランタン方面へトレッキングに行ってきたのだそうだ。トレッキングをしそうな感じには見えなかったので、サングラスを外したときの顔といい、人は見かけによらないものである。まあ、彼にはカトマンズへ来るもう1つ別の目的があるようであったが。
 ネパール人の友人たちにトム(ツトム)さんと呼ばれていた彼は、キアヌ君をラル、キューピー君をディリップと紹介してくれた。ラル君もディリップさん(彼は自分のことを自分でさん付けする)も、おそらく独学で身に付けたのであろう日本語がとても上手だった。しばらく立ち話をした後、トムさんが今回のトレッキングの時に撮った写真がすでにできているというので、宿へ行って見せてもらうことになった。
 ここしばらくの体調不良とのんびりした待ち歩きで忘れそうになっていたが、実は僕がネパールに来た目的はトレッキングなのだった。ヒマラヤ山脈を直に見てみたかったし、山歩きは好きなのでこの機会に思いっきり歩いてみようと思っていた。また、かつてNHKスペシャルか何かでヒマラヤ奥地のムスタンという国(今はネパールの一部)についての番組を見て、できればそこへ行ってみたいと漠然と思っていた。街をぶらぶらしながらも何件かのトレッキング専門の旅行代理店を回ってはいたものの、ガイド付きのトレッキングは結構費用がかかるので、ルートやガイドの有無を含めて検討中だった(ムスタンに関しては気軽なトレッキングのレベルを超えていて、費用もバックパッカー風情がおいそれと払えるような金額ではなかったので早々に計画から外していた)。彼らと会ったのは偶然だが、ちょうどよいタイミングだった。
 ラル君も自宅からトレッキングの時に撮った写真を持ってきてくれた。青い空、残雪、黒い肌の山々、日本ではなかなか見られない風景と、トムさん、ラル君、ディリップさんの解説でますますトレッキングに行きたくなってきた。
 普段はクマリハウスの前でたむろしているというので、また明日の夕方会うことを約束して宿に戻り、ガイドブックを取り出してトレッキングコースをあれこれ考えながらいつの間にか眠っていた。
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by kidai_y | 2007-12-30 23:59